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キャプテンコージの世界一周旅日記

オーロラを求めて【後編】

スウェーデン アビスコ

地図宿に着いたとき、レセプションのある建物は閉まっていた。その建物以外にも全く人の気配がない。一瞬焦ったが、ドアに俺宛のメモが貼ってあった。週末レセプションは閉まり、郵便受けの中に俺のコテージの鍵が入っているとのことだった。コテージは二階建てで一階がリビング、キッチン、ダイニング、バス。二階に2ベッドルームが2つ、あちこちに暖房が置かれ、かなり立派で快適なものだった。俺とジュリアンは予想以上の豪華なコテージに大喜びだった。

3時頃にはもう日が暮れて暗くなってきた。俺たちは2キロほど離れた隣村まで凍った道路をスニーカーでスケートしながら食料の買出しに行った。アイスホッケーの選手だったというジュリアンと競争したが、楽勝だった。スーパーから帰ってくるころにはもう辺りはすっかり真っ暗になっていた。

ポテトチップスとナッツを具にしたスパゲティを食べた後、チェスとバックギャモンをしながら時間を潰した。夕方6時過ぎから30分おきに外に出て空をチェックする。曇っているのか、星すらほとんど見えない。この分では雲よりはるか上空に現れるオーロラは見れそうにないが、それでも俺たちは午前1時頃まで30分おきに外に出ては空を見上げた。だが、期待も空しくとうとうオーロラは現れてくれなかった。

写真翌日は朝から近くの山に登ることにした。山に行く途中に川があった。周りは白い雪と葉のない茶色の木々だけの中、川の水と氷だけは深い緑色をしていて、そこだけが命を持っているかのようだった。

始めトレッキングコースを登ったのだが、そのコースはつるつるの氷だらけだった。一度滑って思いっきり背中を氷に打ち付けてしまったので、コースにも何もなっていない場所を、全く足跡もない新雪を踏みながら登った。めちゃめちゃ気温が低く、めちゃめちゃ乾燥しているので、雪はとんでもなく粒が小さくてさらさらだ。山頂まで登り、そこから遠く広がる白い世界を眺めながら、凍りかけているサンドイッチを食べた。

その日も早々に日が暮れ、前日と同じチップスナッツスパゲティを食べ、やはり同じようにジュリアンとチェスを始めた。6時過ぎから同じように30分おきに外をチェック。前の日と同じように雲が出ており、やはりオーロラどころか星すらも見えない。だが、9時頃から空が晴れてちらほら星が見え始めた。期待が高まってきた。

写真そして、深夜0時頃だっただろうか。外に出て空を見上げた時、俺たちは歓喜の声を上げた。ついに出た!遠くの空にうっすらと白い光が出ている!俺とジュリアンは走って外灯の当たらない丘の上まで行き、空を見上げる。しばらくすると遠くに見えていたオーロラがだんだん空いっぱいに広がり、色も緑を帯びてきた。俺は雪が降り積もった地面の上に仰向けに寝転がり、黙って空に広がる光を見ていた。いつのまにか視界の全てが、とてつもなくでかい薄緑色の光のカーテンに包まれていた。

そのうち、光が波打つように動き始めた。巨大な光のカーテンが、ゆらゆらと揺れている。そして、もの凄いスピードで、見る見るうちにどんどんその形を変えていく。東の空に見えていた濃い緑の光が、「ぐゎんっ」と一瞬のうちに西の彼方までダイナミックに伸びていく。光が、空が、縦横無尽に走り回る。それは、俺の想像をはるかに越える光景だった。俺は、ずっと動かずに空を見続けていた。いや、オーロラに惹きつけられ、動くことができなかった。

そして、光がだんだん薄くなり、ついに空からオーロラが消えた。ずっとオーロラの光に惹きつけられ、動くことができなかった俺は、ようやく現実の世界に戻ってきたような気分になった。現実の世界で気付いたことは、鼻毛が全て凍りついていたことだった。