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キャプテンコージの世界一周旅日記

アンデスの国と人 ~バス編~

エクアドル、ペルー、ボリビア、チリ

地図エクアドルのバスは常に戦いだった。ほとんど全ての街には首都であるキトのバスターミナルからバスが出ており、その中には多くのバス会社のカウンターがあり、同じ行き先の路線を持つバス会社は客を呼び込み合戦で奪い合う。カウンターから身を乗り出して行き先を叫びながら客に手招きする。「何時に出るの?」と聞くと、「今すぐだ!」と必ず答える。本当かよと思ってチケットを買うと、本当にすぐ出発する。

写真ターミナルでバスに乗り込むと、大抵の場合はガラガラだ。そのままバスは出発する。そしてバスがターミナルを出た途端、地元の連中が一斉にバスに乗り込んでくる。皆そうやってターミナル入場料(25セント)を節約するのだ。だからターミナルからバスに乗るのは、外国人旅行者と金持ちだけだ。そしていつもバスはいつも満席プラス2,3人になる。あぶれるのは決まってインディヘナのおばちゃんとその子供だ。いつもそうだ。通路に座るとさらに安くなるのだろうか。そしてなぜかそのあぶれた親子は足を投げ出して座ろうと思って通路側に座る俺の横に座り込んでくるのだ。

出発したバスは、街中を走っているうちはのろのろと走る。その間入れ替わり立ち替わり物売りが乗り込んで来る。お菓子やジュースだけでなく、バッグや時計まで売りに来る。彼らは自分の売っている物を叫びながら通路を往復して去っていく。降りたらまた元いた場所に戻り、次のバスに乗り込んで物を売るのだ。

街を出ると一気にバスは加速する。半端じゃない程飛ばしまくる。キトからどこへ行くにもとりあえず山道を通ることになるのだが、そのカーブだらけの山道をとんでもないスピードで走り、がんがん対向車線に出て前の車を追い越していく。バスがバスを追い越すときなどはほとんどレースのような状態になる。この先に待っている客を他のバスよりも先に乗せたいからだ。だが客を乗せている間にさっき抜かしたバスに今度は抜かれてしまう。そしてその抜かしたバスは次の客を乗せるために停まり、再びさっき抜かされたバスが抜き返す。それが延々と続くのだ。

写真ペルーのバスは随分と進化していた。リマのターミナルは電光掲示板の時刻表があり、バス会社もパソコンで座席の予約と発券を行っていた。値段もエクアドルより高いが、その分快適だった。エクアドルとペルーではそれほど生活レベルは変わらない。むしろ物価は全体的にエクアドルの方が高い。違いは観光だ。ペルーは観光大国で、ビジネスとしても観光産業は発達している。

ただ、リマ市内の路線バスは激しかった。なんとルートが200近くもあり、フロントガラスに行き先がべたべたと貼ってあるのだが、それだけではルートも分からず、とても乗りこなすことは難しい。道路をかっ飛ばしていたバスは、歩道に人がいると歩道側の車線に寄ってスピードを落とし、バスの中からバスボーイがアメ横の魚屋さんのような声で「○○行きだぞー、あんた○○行かねーかー」と声を掛けるのだ。俺も一度その声に誘われて乗ってみた。方向は確かに合っていたのだが、全く俺の行きたいところを通るルートではなく、とんでもないところで降ろされた。

ボリビアに来るとまたバスのレベルががくんと落ちる。無事に目的地に着くということが最大にして唯一の目的となる。バスもぼろくて道も整備されていない。主要都市はどこも大抵標高4000m前後のところにあるため、気候も厳しい。夜中になるとエアコンなしのバスの窓は氷のように冷たくなり、皆持参のブランケットに包まって寒さをしのぐ。そんなバスが真っ暗なデコボコの山道を弱々しいライトで走るのだ。砂利や石による小気味良いバイブレーションはコンスタントにあり、ジャンプしたり傾いたりというのもしょっちゅうだ。

そのお隣、チリのバスは世界でもトップレベルだろう。メルセデスやボルボの大型エアコン付きバスにゆったりとしたリクライニングシート、ドアと客席の間に鍵付きドアという防犯対策、車内にはトイレやコーヒーやジュースのフリードリンクコーナーがあり、ご飯時にはバスボーイがサンドイッチを運んでくる。ただ、移動が長い。値段が高い。俺からすれば、サービスはいらないから安くしてくれと言いたい。そして、こっちは丸一日もバスに乗っているんだから、どうせ出すならサンドイッチの具を毎回変えてくれ。

俺の旅では、移動手段のメインはバスだ。安いからというのもあるが、敢えてバスだ。バスにはその国の表情があり、人々の暮らしがある。乗っているときは大変な思いもするが、振り返ってみると楽しい思い出だったりもする。この先どんなにおじさんになっても、どんなに金持ちになっても、俺はバスに揺られて旅をするぞ!