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キャプテンコージの世界一周旅日記

黄金ルート【前編】

ペルー クスコ、マチュピチュ、プーノ

地図ペルー東部、アンデス山脈の高地にあるクスコでは、随分と長居をしてしまった。一応wajaオープン直前ということもあり、その準備のためというのが表向き(って誰向き?)の理由だったのだが、とにかく俺はクスコでゆっくりしたかった。

泊まっていたのは、クスコ歴数十年という八幡さんが経営する日本人宿、“ペンション八幡”だった。俺は主にネットカフェでwajaのテストをしたり、宿のロビーで本を読んだり、八幡さんや他の旅行者としゃべったりして毎日を過ごした。

写真その頃はちょうど卒業旅行シーズンということもあり、八幡の宿泊客のほとんどは学生の短期旅行者だった。インカ帝国の都クスコといっても、見所は2日もあれば回れてしまう。大抵の学生達は数日クスコで過ごし、数日マチュピチュで過ごし、またクスコに帰ってきたと思ったら風のように去っていってしまう。そんな学生達にしてみると特に何もせずにのんびりしている俺はちょっと異質な存在であり、すっかり“主(ぬし)”キャラになってしまった。ある時なんてチェックインしたばかりの学生に「八幡さんですか?」と聞かれたこともある。おいおい、いくらなんでもあのおっさんと一緒にするな!

あっという間に2週間が経ってしまった。この間俺はペンション八幡で何冊の本を読み、何本のピスコ(ペルーの地酒)を空けたことだろう。そろそろ出発しないとずっと憧れていたウユニ塩湖の雨季が終わってしまう。ようやくwajaもオープンすることができ、ちょうどその頃7年前にオーストラリアのケアンズで会ったいずみちゃんとその友達がクスコにやってきたので、一緒にマチュピチュへ行くことにした。俺達はバスと列車を乗り継いでマチュピチュの麓の村、アグアス・カリエンテスへ向かった。

写真翌日は早朝5時前、まだ始発のバスが出る前にアグアスを出て山を登った。マチュピチュから日の出を見るためだった。そう、俺は朝陽コレクター。まだ暗い中、濃い霧が立ち込めていた。俺たちは始発のバスだけには負けまいと、ひたすら登り続けた。そしてマチュピチュに到着したのは6時半頃だった。日の出にはぎりぎり間に合う時間だった。だが、それどころではなかった。山の上では、激しく雨が降っていたのだ。

しばらく雨宿りをして、雨が弱まったところでマチュピチュ遺跡の東側にある山、ワイナピチュに登った。1時間程で頂上に着き、さらに最も高く突き出た岩によじ登って下に広がる雲が晴れるのを待つ。

写真16世紀にスペイン軍の侵略から逃れたインカ帝国の人々が、クスコから遠く離れた山奥に秘密の都市を作った。それはある一つの山の頂上に作られたため、山裾からは存在を確認することができず、20世紀に発見されるまで歴史には登場しなかった。それがマチュピチュである。

風が強く吹いており、雲の流れは速かった。突然、眼下の雲が切れ、秘密の“空中都市”マチュピチュが現れた。周りを深い山々に囲まれ、低く張った雲の切れ間から現れた山の頂に遺跡がある。それはまさに神秘そのものだった。しばらくすると雲が晴れてマチュピチュの全容が現れた。それはまるで大きく翼を広げて飛ぶコンドルのようだった。ここに今から数百年前、インカの人々がひっそりと生活していたのだ。俺はそんな様子を想像しながら、ずっとマチュピチュを眺めていた。

写真マチュピチュからクスコに戻った日、またペンション八幡でゆっくりとピスコを飲みたい誘惑を断ち切り、いずみちゃん達と別れてプーノ行きのバスに乗った。プーノは富士山よりも高い標高3800mにあるチチカカ湖畔の街だ。チチカカ湖は、インカ帝国の初代皇帝マンコ・カパックが天から降り立った場所とも言い伝えられる、インディヘナの人々にとって特別な湖である。俺はその湖に浮かぶウロス島とタキーレ島を訪れた。

ウロスはスペイン語で“浮かぶ”という意味だ。そしてこの島は文字通り浮かんでいる。島全体が葦という浮き草で作られていて、水面にふわふわと浮いているのだ。島の土地だけでなく、家などの建物や船も全て同じ葦で作られている。そして葦はチチカカ湖にたくさん生えている。島の人達は好きなだけ島を大きくしたり家を建てたりできるのだろうか。

タキーレ島は今もなお残るインカ時代の生活様式や、インカ文明の中でも特殊な(プレインカのものとも言われる)模様を使った織物などが“売り”なのだが、それ以上に美しい風景とすれ違う人々の素朴な笑顔が心に残る島だった。

ここでも俺は旅路を急いだ。なんとしても雨季が終わる前にウユニ塩湖に行きたい。以前にポスターか何かで見た、一面に広がる真っ白い塩の大地の上に薄く水が張り、そこに空が反射して上も下も青空という世界を歩きたい。