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キャプテンコージの世界一周旅日記

リマのおばちゃん

ペルー リマ

地図トゥンベスを正午に出たバスは、翌朝の8時頃、ペルーの首都、リマのバスターミナルに着いた。リオバンバを発ってから35時間、リオバンバでも朝から列車とバスに乗っていただけなので、実質49時間も移動し続けていたことになる。しかもバスの中ではあまり眠れなかった。いつものごとく体のデカイ俺は通路に両足を出して眠るので、首と腰がおかしなことになっている。さらにキトを出てからもう丸3日シャワーも浴びてない。海岸地方を走るエアコンなしバスの中は蒸し暑く、体中ベトベトだ。俺は一刻も早くシャワーを浴びてベッドで眠りたかった。

バスを降りるとホテルの客引きやタクシーの運ちゃん達がガガッとよって来る。ホテルは安いところでも一泊10ドル前後だったし、タクシー代自体も高かったので俺は彼らを無視して通りに出、流しのタクシーを捕まえて旧市街(セントロ)へ向かった。セントロで一泊16ソル(約5ドル)の安宿を見つけてチェックインした。早速シャワー(お湯はほとんど出なかった)を浴びてからベッドで昼過ぎまで眠った。数ヶ所ダニに噛まれたが、幸せな快眠だった。

写真起きてからセントロをぶらついてみた。旅行者の間ではとにかくリマ、特にセントロの評判は悪い。「危ない」「汚い」「人がウザイ」と散々だ。だがこれは第三世界の大都市ならどこでも共通して言えることだったし、キトではほとんど新市街にいた俺にとっては久しぶりの刺激だった。

それに想像していた程にはセントロも危なそうではなかったし(むしろキトの旧市街の方がよっぽど物騒な感じがする)、汚いと言ってもだから何だという程度だ。ただ、人は本当にウザかった。

セントロ、特にアルマス広場付近を歩いていると色々な奴らが話しかけてくる。いんちきガイド、麻薬の売人、売春の斡旋、旅行代理店やホテルを紹介してマージンを取ろうとする奴、飯や酒をおごって欲しいだけの奴、、、。とにかく何かを企んでいるろくでもない奴らがほとんどだ。中には仲良くなって飲みに行き、相手の酒に睡眠薬を入れて眠っている間に身ぐるみはがす手口もあるらしい。時にはただの酔っ払いやジャンキーも話しかけてくる。

そんな奴らは無視してしまえばいいのだが、ごくまれにいい奴もいるし(そうやって友達になるケースだってある)、使える奴もいるし、なんと言っても今の俺にはいいスペイン語の練習にもなる。ただ単に連れもいないし暇だったからとも言えるが、俺はそんなよって来る奴らをことごとく相手にした。

写真「オー、ハポン!(スペイン語では日本のことを“ハポン”と言う)トモダチ、トモダチ!」最初から“トモダチ”と言ってよって来る奴の80%は怪しい奴だ(意味もなく「トモダーチ!」と叫んで手を振るだけの奴はたくさんいるが)。「トキオ?オーサカ?」「ノー、チバ」日本人旅行者のほとんどは大都市かもしくはその近郊から来ており、大抵はその都市から来たと言うし、俺もいつもは東京からと言うのだが、ここはあえて千葉と言う。「日本人はとても頭がいい。テクノロジーは世界一だ。トヨタ、カワサキ、ソニー!」意味もなく日本を誉めてくる奴の90%は怪しい。「スシ、テンプラ、ゲイシャ、ヒロシマ、チンコ、、、」とにかく知っている日本語の単語を並べ立てる奴もいる。「他には?」「えーっと、とにかく日本はいい。俺は東京に友達がいるんだ。名前はヒロユキナカムラ。知ってるか?」それが本当でもそうじゃなくても、日本に友達や親戚がいると言ってくる奴の95%は怪しい。しかもお前の友達なんて俺が知ってるわけがない。

「ところで今どこに泊まってるんだ?」本題に入ってきた。「すぐそこのホテル○×△は綺麗で大きな部屋がたったの30ソルだぞ」「俺のホテルは16ソルだよ」「そうか・・・クスコには行ったのか?」「まだ行ってないけどそのうち行くよ」「安い航空券を売ってるところ教えてやろうか?」「いや、俺バスで行くから」「バスは時間がかかるからやめた方がいいぞ」「でもアレキパにも行きたいし」「そうか・・・アレキパはいい所だ」隙を見せつつ狙いをはぐらかすのが会話を楽しむコツだ。

「アミーゴはマリファナ吸うのかい?」「はぁ?ひょっとして俺にドラッグを売りつけたいわけ?」「ノーノー、そうじゃないよ」たまに核心をズバッと突いてやると慌てたりもしてまたおもしろい。「でもな、ペルーのマリファナは最高だぞ」「へー、そうなの?」「そうさ!これくらいの量でたったの10ドルだ。もし欲しいんだったら、」「やっぱり俺に売りたいんじゃん!」「いや、そうじゃなくて、もし欲しいなら安く分けてあげたいだけで、、」「いらない」「本当か?本当にいらないのか?」「本当にいらない」「分かった。チャオ!」ダメだと分かると風のように去っていく。

こうして向こうから近づいてくる奴や、観光客相手の商売をしている奴がぼったくろうとするのはいつものことだが、今回のクリーニング屋のおばちゃんには参った。たまたま見つけたクリーニング屋にTシャツ数枚と下着数枚を出し、帰りに控えのレシートを見て驚いた。なんと15ソル、4ドル強だ。全体的に少しずつ物価の高いエクアドルでもこの量だと1ドルそこそこだ。宿のロビーで俺が怒っていると、そこにいたスペイン語のうまいフランス人のアンが「私が一緒に言って文句を言ってあげるわ!」と言ってくれた。これは心強い。

というわけで今度は二人でクリーニング屋に出向いた。まず作戦通りにアンがにこやかに「1キロあたりいくらですか?」と聞く。「3.5ソルだよ」とおばちゃんが答える。「じゃあこの15ソルって何なんだよ!」と後ろに隠れていた俺が現れて言う。「それは・・・、1キロあたりは3.5ソルだけど量が少ないとマシンじゃなくて手洗いになるから割高になるんだよ。しかもスピード仕上げだからさらに割高で、さらに&◎*□¥■△#○、、、」途中から俺にはもう理解できなかったが、アンが「でも15ソルというのはそれでも高すぎる」と言うと、「他のクリーニング屋に行ってこれが妥当な値段か確かめてくれてもいいんだよ」と言い出した。俺がそこまではしないと思っているんだろう。完全にむかついた。「また戻る」と言って俺達は店を出た。

「ひょっとしたらあのおばさんの言っているのは正しいかもしれない」とアンが言い出した。おいおい、Tシャツ1枚3ソルで買える国なのに、それを洗うだけで3ソルするわけないだろ。俺は一人で出直すことにした。

他のクリーニング屋に行って尋ねてみると、やはりその量だったら3ソルがいいとこだろうとのことだった。スピード仕上げでも15%増しだった。その店の料金表をもらい、俺は自信を持って再戦に挑んだ。

俺が現れると、おばちゃんは「どうだった?」と平然と聞いてきた。「皆この値段はありえないって言ってたよ」「誰に聞いたのさ」「他のクリーニング屋、ホテルの従業員、ツーリストポリス」ツーリストポリスというのは嘘だ。「だってこれは*◎△■・・・」何を言っているか聞き取れなかったが、とにかく俺は俺の言い分だけを言いまくった。「これ見なよ。このクリーニング屋はたったの3ソルだよ。手洗いだろうが何だろうが関係ない。スピード仕上げだって大して変わらない。ツーリストポリスはもし今の値段のままだったら一緒に来てくれるって言ってたよ」ツーリストポリスの話はやはり嘘だが。するとおばちゃんは中で働く他の人達に「ちょっと聞いてよー、このハポネスがさー」みたいな感じで助けを求めるし、近所のガキどもは集まってくるし、何だか俺の方が悪いことをしているみたいでいやーな気分になってきた。

それでも粘っていると、「じゃあ3.5ソルでいいわよ」とおばちゃんが言ってきた。「3ソルでしょ」「これは1キロあるわよ」「ないでしょ」「あるわよ」クリーニング屋のくせになんと秤がない。仕方ないので3.5ソルで手を打った。それでも悔しさが収まらない俺が「じゃあ15ソルっていうのは何だったの?」と聞くと、また何か早口でまくし立てられて聞き取れなかったので、面倒臭くなった俺は店を出た。

その日の夜、宿の近くの食堂に行き、4ソルの定食を食べた。愛想のいい女の子と、無愛想のおばちゃん二人で切り盛りしている所だった。食べ終わって1ソルコイン4枚を女の子に渡すと、そのうちの1枚が偽金だからこれじゃダメだと言われた。その子は偽金の見分け方を丁寧に教えてくれた。他に持っていたのは20ソル札だけだったのでそれで払うと、お釣りがないとおばちゃんが近所の店に両替に行った。帰ってきたおばちゃんはまず俺に10ソル札と5ソル札を手渡し、その後ポケットから取り出した小銭の中から1ソルコインを選んで俺にくれた。そのコインは、、、まさに数分前、女の子が俺に説明してくれた偽金そのものだった!!!

まったく、リマのおばちゃん達はたくましい。