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キャプテンコージの世界一周旅日記

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トランジットのはずが、、、

トルコ イスタンブール

地図入社してから3年、“旅したい”禁断症状が出てきていた俺は、上司に無理を言って1ヶ月間の休みをもらうことができた。どこに行こうか迷ったが、当時読んだばかりの本、“ドナウの旅人”に影響され、東欧諸国をドナウ河沿いに旅することに決めた。芸術の都ウィーンでオペラやクラシックを堪能し、ブダペストでスラブ系の美女と恋に落ち、ルーマニアではゆっくりと移動しながら最後に黒海に出る。素敵な旅になる予感がしていた。

トルコ航空でイスタンブールに着いた。ここで2泊してからウィーンへ飛び、そこからハンガリー、ルーマニア、ブルガリアと陸路で下りてイスタンブールに戻ってくるというコースだ。トルコにも興味はあったのだが、今回の旅のテーマはドナウ河だ。安く飛べるからトルコ航空にしただけであり、イスタンブールはトランジットのためという程度にしか考えていなかった。

空港からバスで市内まで出て、旧市街へ向かう路面電車に乗り換える。その乗り換えの間にも、宿や旅行代理店の客引き、土産物屋がひっきりなしにやって来る。旧市街の中心、スルタンアフメット前の駅で降り、安宿が集まるエリアを目指す。その間にも何人もの客引きや意味の分からない奴等が声を掛けて来る。いくつか覗いてから一つの宿に決め、自分のバックパックを置いてようやく一息ついた。

写真そう、これだ。これが旅だ。客引きはうざいし重たい荷物を持って歩くのは疲れるが、久しぶりに旅をしているという満足感を感じた。

イスタンブールは予想以上にツーリスティックで、地元の連中は観光擦れをしている印象を受けた。街を歩いていると「コンニチワー」「ニホンジンデスカ?」と頻繁に日本語で声を掛けられる。少し相手にすると、結局絨毯や石を売ることが目的だったりする。すぐにトルコ人にはうんざりしてしまった。

夕方、露店のポストカードを見ていると、上の方から「コンニチワー」という声が聞こえた。見上げると一人の男がホテルの窓から顔を出している。「ニホンジンデスカ?」いつものことだ。無視してカードを見ていると、「ナニシテルノ?」「オハナシシマショー」とうるさい。それでも無視していると、俺のところまでやってきた。こうなると少しは相手せざるを得ない。

メメットと名乗るそいつはチャイでも飲みに行かないかと俺を誘ってきた。満面の笑顔に流暢な日本語、いい奴にも見えるが相当胡散臭くもある。トルコ人には親日家も多いが、ここイスタンブールでは詐欺や強盗もよくあると聞く。だがその時俺は貴重品を持っていたわけでもなかったし、特に何もすることはなく暇だったので、少し付き合ってみることにした。

話してみると怪しい奴でもなさそうだった。レストランでチャイをご馳走になり、どこかの宿の屋上のバーでビールを飲んだ。次の日も俺をいろいろ案内したいというので、待ち合わせをして別れた。

写真翌日、メメットにブルーモスクなどの観光地を案内してもらいつつ、その行き先々で彼の友達の店に連れて行かれる。それは何かを買わせるためとかそういうものではなく、ただ友達を紹介したいといった感じだった。そしてどこに行っても皆俺を快く歓迎してくれ、チャイをご馳走してくれる。必ずいつも甘いりんこのチャイだ。俺はすっかりこの味にはまってしまった。

そうして連れて行かれたエジプシャンバザールの店の一つが、その後長い付き合いとなるエドが働く土産物屋だった。店の連中はとても気さくないい奴等ばかりで、俺はあっという間に皆のことを好きになってしまった。店の一角に座り込み、チャイを飲みながらおしゃべりをしているのがとても楽しかった。

その日の夜、バザールが終わってから店の皆と遊びに行った。夕食を食べ、ラクというトルコの酒を飲み、水パイプを吸い回す。こうして旅先で地元の仲間ができたのは初めてのことだ。エドが明日も店に遊びに来いと言う。もちろん行きたいのは山々だが、俺はウィーンへ発つ予定だ。そんなものは延ばせばいいと言われた。それもそうだ。俺はウィーン行きの日程を延ばした。

写真次の日から俺は毎日エドの店へと通った。どこかに用事があってもまずは店に行き、そこの二階で絨毯屋をやってはいるが全く働く気のないセラや、同じようによく遊びに来るメメットに連れて行ってもらう。そしてまた店に戻る。

店が終わると、バザールの他の店で働く仲間や、店で仲良くなった旅行者なども一緒に飲みに行った。休みの日にはアジアンサイド(イスタンブールはボスポラス海峡でヨーロッパ側とアジア側に分かれている)までピクニックをしに出かけた。エドの家やセラの家に泊まらせてもらうこともあった。

そうしてトランジットのためだけに来たはずのイスタンブールで、1週間が経った。いい加減ウィーンへ飛ばないと東欧の時間が足りなくなる。俺は出発を決めた。

「コージ、1週間したら帰ってくるだろ?」
「それは無理だって!4ヶ国も回ってくるんだから。3週間後かな」
「じゃあまた帰ってきたら店においで」
「おう」

そう言ってエドと別れた。だが、まさか本当に1週間で戻ってくることになろうとは、その時俺は考えもしなかった。

(写真上:エジプシャンバザール 中:アジア側に向かう船 下:エドと女の子と水パイプ)

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