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キャプテンコージの世界一周旅日記

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楽園

タイ コ・パンガン

地図インドの旅は刺激的で楽しかったのだが、心身共に疲れ果ててしまった。日本に帰る前にビーチで少しのんびりしたかった俺は、カルカッタからバンコクへ飛んだ次の日、サムイ島に行くことにした。

スラーターニーの港から乗ったサムイ島経由パンガン島行きのフェリーで、日本人とイスラエル人の女の子2人組と出会った。彼女達、リエとノアはパンガン・フリークで、もう今年だけで4回目らしい。絶対にサムイよりもパンガンの方がいいからと2人に誘われ、結局俺はパンガンに行くことになった。

島の港からトラックでハドリンという村に行った。少し観光化されてはいるものの、小さくて素朴な村だった。島の東西を結ぶ道と、それと交差する東側のメインビーチに沿った道の2本しか道らしい道はなく、その交差点付近にレストランや屋台、土産物屋などが集まっている。

リエとノアは、現地の人や他の旅行者達によく「おうっ!帰ってきたか!」とか「久しぶり!元気だった?」とか声を掛けられる。いかにも常連という感じだ。そしてその度に俺のことも紹介してくれる。おかげで俺にもどんどん友達ができていった。

この島には独特のカルチャーがあった。まず、誰かと待ち合わせをするときには、「何時にどこで」などという約束は決してしない。「じゃあ後で」としか言わない。時間なんてあってないようなものだし、場所だって適当にぶらぶらしていれば必ずどこかで会えるのだった。

写真また、泊まっている場所の話をするときは、「泊まる」ではなく「住む」という言葉を使う。英語でも日本語でもそうだ。それだけ長期滞在ばかりだということなのだろう。

長期と言っても、本当に超長期で滞在している人が多かった。彼等の多くは3ヶ月に1度だけ、観光ビザが切れる直前にマレーシアとの国境まで行き、タイを出国した直後にまた再入国して、まっすぐパンガンに帰ってくるというのを繰り返す。さらにはビザとかそんなことは全く気にせず、もう何年も住みついてしまっているという人も少なくはなかった。

ここはフルムーンパーティで有名な島で、満月の日には他の島や本土からもたくさんの人がやって来て、ビーチやビーチに面したクラブで夜通しパーティが行われる。だがハドリンのいくつかのクラブでは、満月の日に限らず毎晩何かしらのパーティが行われていた。

またこの島は、ほとんどフリー・マリファナ状態だった。昼間からやっている人も結構いるが、夜になると島全体がきまっている感じだ。それぞれのバンガローの中だけでなく、ビーチのあちこちで煙が立ち、クラブでは皆が気持ちよさそうに踊っている。

写真昼のビーチも凄かった。東側のメインビーチでは、半分くらいの女がトップレスだ。西側へ行くと完全にヌーディストビーチで、男も女もほとんどが全裸だった。俺は最初脱ぎそびれてずっと海パンを履いていたのだが、全裸の中では逆に不自然な気さえした。

(写真右は西側のビーチにて。俺の奥には全裸の人達がたくさん寝転んでいる!)

そんなパンガンでの俺の日課はこんな感じだった。

正午: 起床。
午後1時: レストランでマンゴーとパパイヤとバナナを敷き詰めた上にコンデンスミルクをたっぷりかけたパンケーキを食べる。そこに友達が集まってくる。
午後2時: 東側のビーチに行って遊ぶ。初めは目のやり場に困ったが、トップレスの女の子と話すことにもいつの間にか慣れる。
午後5時: 西側のビーチへ移動し、夕陽を眺める。暗くなったら皆でレストランに行って夕食。
午後8時: バンガローに帰り、テラスでタブラ(インドの太鼓)を叩く。
深夜0時: 友達と合流してどこかのパーティへ行く。飲む。踊る。
午前5時: 就寝。

写真愉快な仲間に囲まれ、したいことだけをする。何の不満もなく、平和で楽しい日々だった。ここはまさに夢の楽園だった。ずっとこのままでいたいと思った。そんな人生もいいかもしれないと。。。

だが、俺にはできない。俺には帰りの飛行機も、日本の家族や友達も、大学の卒業式も、その後の就職も、全てが大切だ。現実の世界へと帰ろう。またいつでもここには戻って来れる。

次の日俺はパンガンを発った。見送りに来てくれた皆がトラックの荷台の俺に手を振ってくれていた姿が、フェリーから見たどんどん遠ざかっていく島が、毎日見ていた海に沈む夕陽が、ずっと頭から離れなかった。


<編集後記>
この翌年、イギリスで小説『ザ・ビーチ』が出版され、さらにその数年後、同タイトルの映画が上映されて世界的な大ヒットとなる。

「その昔、旅人達は楽園を探し求めてパンガンに辿り着いた。だが観光客の増加と共に島は汚され、“楽園”としてのパンガンは終わった。そしてそこからさらなる究極の楽園、“ビーチ”を目指す・・・」

それがこの物語の設定だった。だが現実に「ビーチ」が存在するわけでもなく、映画のヒットによってますます多くの観光客がパンガンを訪れた。あれから俺はパンガンには行っていないが、「道がアスファルトで舗装された」「ハドリンにはコンビニが何件もできた」「フルムーンパーティは家族連れで賑わう」などの噂をたまに聞く。

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