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キャプテンコージの世界一周旅日記

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旅の恋

ネパール ポカラ

地図バラナシから再びカルロス&サンドラと共にバスでネパールの国境へと向かった。朝出たバスは夕方には国境に着き、出国手続をしてからネパールへと入り、その晩はネパール側の街で泊まることになった。

次の日の朝、その街からカトマンズへと向かうカルロス&サンドラと別れ、俺はヒマラヤの山間の街、ポカラへと向かった。2人は俺の乗ったバスを見送ってくれた。窓越しの別れに、俺はまた涙してしまった。

バスが出発して間もなく、俺が寂しさに沈んでいると、突然前の方に座っていた白人の女の子が俺のところへやって来て、「隣に座ってもいい?」と聞いてきた。前日の宿で俺がかわいいなと思っていた子だ。もちろん隣に座ってよくないわけがない。俺の悲しみは一瞬にして吹き飛んだ。

彼女はスイス出身で名前はイヴォン。カールした長いブロンドの髪、くりくりとした丸い目、話すときに俺の顔を覗き込むように見る表情も超キュートだ。

イヴォンは友達2人と旅をしているのだが、その2人はカップルのために、1人になる時間が多いのだと話していた。その時もカップルは2人掛けの席でいちゃついていた。「そんな時は俺のところにおいで」

ポカラでは3人で1週間程の河下りのツアーに参加すると言っていた。だがその時彼女は風邪気味だったために、ツアーをキャンセルしようか考え中とのことだった。「じゃあ俺と一緒に山でも見ながらのんびり過ごそうか」

ポカラでどこに泊まるのかと聞くと、まだ決めていないと言っていた。俺もまだ決めていないと言うと、だったら私達と一緒に泊まろうと言ってくれた。「us(私達)じゃなくてme(私)だろ」

毎回イヴォンとの会話では最後の一言をぐっと飲み込みつつも、俺はどんどん彼女に惹かれて行った。ポカラでも数日一緒に過ごせたら何て素敵なことだろう!

バスがポカラに着いたのはとっくに陽が沈んだ後で、周りは真っ暗になっていた。そしてバスから降りるとそこはとんでもないことになった。大勢の宿の客引き達による、旅行者の奪い合いが始まったのだ。

そこはバス停というよりただの空き地のような所であり、街灯もなく真っ暗闇だ。その中で旅行者の腕を掴んでホテルの売り文句を大声で並び立てる客引き、離れ離れになってしまった連れの名前を叫んでいる者、バスの屋根の上から降ろされる荷物を受け取ろうと叫んでいる者と、まさに大混乱となった。

すると休憩のときに少し話をした、同じバスの日本人の女の子2人組が俺の所にやってきて、怖いから一緒に宿まで行ってくれと言ってきた。その時2人には既に1人の客引きが付いていた。2人と同じ宿に行くということは、そいつの宿に行くということだ。イヴォンを探すと、少し離れた人混みの中に友達カップルと一緒にいた。そして彼等にも既に宿の客引きが付いていた。

客引きの車はどれも普通のセダンだ。無理して乗っても4人。2つのグループが同じ車に乗り、同じ宿に泊まるのは不可能だ。俺はイヴォン達のところに行きたい。だがそうするとこの不安がっている2人を見放すことになる。どうする?どうする俺!

俺が迷っていたその時、イヴォンが辺りを見回し、俺を見つけた。「コージ、私行っちゃうわよ!」「待って、イヴォン!」目が合った時、そんな言葉を交わしたような気がしたが、イヴォンも俺も何も言わなかった。そのままイヴォンは客引きに手を引かれて行ってしまった。一度俺の方を振り返ったが、俺は追うことができなかった。俺達は、引き裂かれてしまった。さよならの挨拶さえできないまま、こんな別れになってしまうとは。。。

俺は2人の日本人の女の子と車に乗った。2人が恨めしかった。

ポカラは素晴らしいところだった。緑の山々に囲まれ、天気のいい日にはその奥に真っ白いヒマラヤがそびえている。湖は美しく、空気は綺麗だ。ほどよく観光化された街は過ごしやすく、とてものんびりした時間を過ごした。だが俺の気分はなんとなく晴れないままだった。

写真だが、そこで偶然の再会が俺を待っていた。

ある時ポカラの街を散歩していると、なんと前からイヴォンが俺の方へ向かって歩いて来るではないか!彼女も俺に気付き、手を振りながら笑顔で近づいてくる。いきなり抱きしめてしまおうかとも思ったが、爽やかに挨拶をした。

「やあ、元気だった?」
「うん、コージは?」
「元気だよ」
「そう、良かった」

もう2度と会えないと思っていたせいもあってか、せっかく会えたのに何を話していいのか分からない。俺は思い切って夕食に誘おうと切り出した。

「もうディナーは食べた?」
「うん、今食べてきたところなの」
「そう・・・」

そういえばイヴォンは河下りのツアーに参加せずに、1人でポカラに残るかもしれないということを話していた。だとしたらまたいつでも会える。

「具合はどう?河下りはどうするの?」
「うん、もうバッチリよ。明日からツアーに行ってくるの」
「そうなんだ・・・」
「コージがブランケットを貸してくれたおかげね!」

あの時バスの中でブランケットなんか貸さなければ良かった。

「じゃあ、ツアー楽しんできてね」
「ありがとう」
「またね」
「うん、またね」

なんでもないような振りをして、「またね」と言って別れてしまった。もう会えるはずもないのに。スイスの住所と電話番号を聞こうかとも思った。が、聞けなかった。

こうして、俺の初めての旅先での恋は終わった。

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