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キャプテンコージの世界一周旅日記

最後の冒険【前編】

インド カルカッタ

地図ある日俺が宿のロビーでタバコを吸っていると、突然男に話しかけられた。「あんのー、ぬほんずん(日本人)のかたですかぁー?」つぶやきシローそっくりのイントネーションの男の子だった。

「そうですけど?」
「いんやー、よがったぁー!いや、俺、怪しいモンじゃねぇんですヨ。茨城大学1年のぉ、梅沢といいますぅ。ウメって呼んでください!」
「はぁ、、」
「俺、インドに来てからとんでもねぇ目にばっかり遭わされてー、俺、俺ぇ、、、」

今にも泣き出しそうだったので、まずは落ち着かせて、ゆっくり話を聞いた。彼はデリーからカルカッタまで2週間の予定でインドにやって来たのだが、しょっぱなのデリー空港から悪質なタクシーに捕まり、その後も次々と宿、旅行代理店、土産物屋と、ガイドブックに「こんな手口に注意!」と書いてありそうな詐欺やぼったくりに見事ことごとくやられてきたのだった。

そして彼はなんとカルカッタまでをたったの3日間で移動してきたのだった。日本からの往復航空券はFIXだったために、まだ1週間以上も日程が残っているのだが、もうすぐにでも日本に帰りたいと言う。

「俺はねぇ、自分探しのためにインドさ来だんですヨ。でも、、、わぁがすぎたぁ(若すぎた)・・・」

確かにかわいそうなのだが、彼のコテコテの訛りと芝居掛かった言い方がどうもおかしくて笑えてしまう。とにかく、その頃俺はすっかりインドにはまり、旅が楽しくて仕方がなくなっていた時期だったため、なんとかウメにもインドを、旅を楽しんで欲しいと思った。そこで、その日から俺はウメをいろいろ連れ回すことにした。

~屋台~
屋台でサモサ(ポテトを包んだ揚げ物で、インドで最もポピュラーなファストフード)を食べようと、俺が2つ買って1つをウメにあげた。

「うわっ、うめぇっすねぇ。これ、おいくらですかぁ?」
「1個1ルピー(約3円)だよ」
「ぬぁ、い、い、1ルピー?こんなにうまくて腹にもたまるのに1ルピー?信じられねぇー、インドってぇ安いんですねぇー」

ウメはそれまでインド人にたかられながら、何百ルピーも出してレストランなどで食事をしていたらしい。その屋台でウメはサモサを5個くらい買っていた。

~買い物~
バザールで俺が贋物のレイバンのサングラスを買った。「これいくら?」「200ルピーだよ」「そりゃ高い」「じゃあいくらだったら買うんだい?」「50ルピーかな」「それは無理だよミスター。150でどうだ?」「60」「120」こうしたやり取りの後、結局75ルピーで買った。これはインドではよくある交渉なのだが、それをずっと隣で見ていたウメは興奮していた。

「お兄さん、すげぇですねー、そうやって値切るんですかぁー」
「いろいろやり方はあるよ。相手の言い値が高いと思ったら怒って去るフリをしたりすれば、必ず向こうは呼び返して来るし」
「そっがぁー、怒ってみればいいんですねぇ。よぉし、、、」

写真ウメは隣のサンダル屋に行き、値段を聞いた。店の兄ちゃんが150ルピーと答えると、「エクスペーンシーブ!!!」と叫んだ。いきなり大激怒だ。そこまで怒ることはないだろうに。鼻息荒くウメが去ろうとすると、お兄ちゃんが呼び止めた。「待ちな!いくらだったら買うんだい?」「50ルピーだ!」インド人にしては珍しく、そのお兄ちゃんは「オッケー」とあっけなく答えた。「え?本当に?本当に50ルピーなの?そんなに安いの?」と今度はウメが問い返した。おいおい、お前が付けた値段だろ。。。初めて値切って買い物をしたウメはその後もしばらく大興奮で、宿に帰っても他の旅行者達にその自慢話をしていた。

~カレー~
ローカルな食堂に行った。カレーとチャパティを注文し、お皿に盛ってもらうと、ウメがお店のおじさんに「スプーンをくれ」と言った。それを聞いて俺もおじさんも他の客も大笑いだ。「ミスター、うちにはスプーンなんてないよ。カレーは手で食べるんだ」と言われて驚いている。ウメは俺の食べ方を見ながら、手のひらまでべちょべちょにして「うめぇうめぇ」と言いながら食べた。

食べ終わると、ウメは鼻歌を歌いはじめた。ここに来る前に一緒に観たインド映画のテーマ曲だ。流行っている映画は皆必ず見ているから、インド人達と映画の話をすれば盛り上がれるぞと俺が言ったからだった。すると他の客達が「お前あの映画観たのか?」「あれは良かっただろー」「俺は5回も観たぞ」「俺は7回だ!」とウメを囲んできた。それまで悪魔にしか見えなかったインド人達と仲良くなれて、すっかりウメはご満悦だった。その後しばらくはどこに行ってもウメはその歌を歌っていた。

~妹~
「茨城の家に電話さすでおごうがなぁー」
「なんで?」
「いんやー、この前電話した時は、“もう生きて日本に帰れねぇかもしれねぇ”なんて俺が言ったもんだから、皆心配してるかなーと思って」
「アホか!どうして嘘でも元気だって言わないんだよ!すぐ電話しに行こう」

『もすもすぅ?あ、おめぇが。にぃちゃんだよぉ』
『おぅ、もーう大丈夫だぁー。親切なお兄さんがいでー、よぐしてもらってっからー』
『この分だと生ぎで帰れそうだからおめぇも心配すんなぁー』

「あのバカ妹が“お兄ちゃんなんて帰ってこなくてもいい”とがなんとが言いながら、ちょっと泣いているようでしたぁ。えへへ」

アホか。。。

そうしてウメは徐々にカルカッタの街に馴染んでいった。時には俺と一緒ではなく、1人で外を散歩したりもできるようになった。そんなウメに、ある重大な決断を迫られる時が来た。