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キャプテンコージの世界一周旅日記

インディアン・トレイン

ネパール ~インド

地図ネパールの首都カトマンズから、インド最大の都市であるカルカッタまで一気に移動することにした。国境とカルカッタ行きの列車が出る街の名前を押さえただけで、一体どれくらいの時間がかかるのかさえ分からなかった。

カトマンズを夕方の6時に出発したバスは、しばらく走ると山越えの道に入った。舗装されていない道を走るためにバスは常に細かい振動を続け、時には大きく跳ね上がる。座席のクッションは剥げ、背もたれはほぼ直角で、席の間隔が狭いために、揺れる度に膝が前の席の後ろにぶつかる。苦痛の連続だった。

夜になると山の気温は一気に下がる。にもかかわらず、壊れてちゃんと閉めることができない窓ガラスの隙間からは、外の冷たい空気がぴゅーぴゅー入り込む。激しい振動、体の痛み、凍えるほどの冷気。これが一晩続き、一睡もできないまま朝の4時頃にインドとの国境の街、ビールガンジに到着した。

バスターミナルではたくさんのリキシャーが待ち構えていた。皆口々に国境は遠いから乗れと言うが、どうせ客引きの決まり文句に違いない。そう思って俺はリキシャーの走る方向に歩き始めたのだが、甘かった。結局1時間程歩くはめになった。

インド側のラクソウルで朝食を取り、カルカッタ行きの列車が出るパトナー行きのバスに乗った。そのバスがまた最悪だった。炎天下の中、クーラーもないバスはぎゅーぎゅー詰めの満員で、人と荷物に挟まれ、息も苦しいほどだ。

パトナーに着いたのは2時。簡単な昼食を済ませ、駅の切符売り場に行った。この駅には外国人専用の窓口はなく、インド人達と一緒に一般の窓口に並んだ。

俺の前には30人ほど並んでいただろうか。1人捌くのに5分はかかっている。相変わらずどうしてそんなに遅いのか理解できない。さらに皆がなんとかして少しでも前に行こうと、列が団子のような状態になり、割り込みも頻繁に起こる。すると俺の前に並んでいたお兄ちゃんが突然大きな声で仕切り始めた。

「皆ちゃんと一列に並べ!」「ほら、ここはどっちが前だ?お前か?じゃあお前はこいつの後ろに並べ」「おい!割り込みはするな!お前今来たのならちゃんと1番後ろに並べ!1番後ろはどこだ?そこか!じゃあお前はここだ」

見事な仕切りだった。帰ってきたそのお兄ちゃんを俺が褒めると、俺に持っていたナッツをくれた。俺もお礼にタバコを1本あげた。

ようやく俺の順番がやってきた。もうかれこれ3時間は待った。

「次のカルカッタ行きの寝台チケット1枚」
「カルカッタ行きはこの窓口じゃないよ」

ちょ、ちょ、ちょっと待ってよ!これだけ待ってそりゃないだろ。だがいくら頼んでもやはり無理で、どこそこにある別の窓口に行って買えと言われた。その「どこそこ」が聞き取れず、意味も分からなかったのだが、とにかくあっちに行けば分かると言って追い返された。

一気に気持ちが萎えたが、切符を買わないことには埒が明かない。言われた方向に行くとまた窓口があり、そこに並んでようやく切符を買うことができた。が、そこで買えたのは乗車券だけで、寝台の券を買うことはできなかった。こうなったら列車に乗ってからが勝負だ。

午後6時を回っていた。列車は7時発。俺はその列車が入ってくるホームに行き、地べたに座って列車を待った。ホームは人でいっぱいだった。

隣に白髪の老人が座っていた。おじいちゃんはしきりと俺に話しかけるのだが、ヒンドゥー語のために全く理解できない。俺はヒンドゥー語が分からないと繰り返し英語で言うのだが、おじいちゃんはその度に豪快に笑い、そしてまた話し始める。そのうち俺も面倒になり、一緒に笑っていた。

7時になっても列車は来なかった。インドで列車の遅れは日常茶飯事だ。さらに待つこと2時間、構内アナウンスが入り、にわかにホームが騒がしくなった。来たか?と思って俺も準備をした。が、どうやらその列車は俺の乗るカルカッタ行きではなく、そのずっと前に来るはずだった列車だった。

ホームに入ってきた列車は、窓やドアから人が溢れているほどに満員で(文字通り溢れていた!)、屋根の上にも人が乗っている。列車が停止する前から飛び降りる人や飛び乗る人もたくさんいた。これが噂に聞いていたインディアン・トレインか!隣のおじいちゃんは「じゃあわしは行くよ」というような事を言い、それ以上乗れなさそうなドアの部分に足を掛け、手すりに掴まった。列車はおじいちゃんの半身を外に出したまま発車した。あの体制で何時間走り続けるのだろうか。俺には無理だ。想像するだけで恐ろしかった。

その後も列車はなかなか来なかった。時だけが空しく経つ。そして深夜2時を回った頃、また構内アナウンスが入ったかと思うと、今度は待っていた人達が向かいのホームへ通じる渡り廊下へ向かって歩き始めた。どうやら直前で列車が入るホームが変わったらしい。俺も慌てて他の人の後に続いた。

列車が入ってきた。7時間の遅れだ。そんなことはどうでもいい。今はただ席を確保することが、できれば寝台を確保することが全てだ。ここが勝負とばかりに、俺はまだ列車がそれほど速度を落とす前に飛び乗った。だがさっきの列車とは全く異なり、車内はガラ空きだった。結局俺の他に列車に飛び乗っている人なんていなかったのだが、とにかく俺は寝台を確保することができた。

車内では狙い通り車掌から寝台の券を買うことができ、ようやく落ち着いて横になることができた。だが俺が寝ようとすると、前のベッドにいたお兄ちゃんが話しかけてきた。やはり彼も全く英語が話せないのだが、ジェスチャーによると、危ないからバッグと柱を鍵で繋ぎ止めろと言っていたのだった。俺はバッグを枕にして寝るから必要ないと言ったのだが、俺が鍵を持ってないと言ったのかと思ったらしく、彼は自分の鍵を俺にくれた。

ようやく眠れたと思ったらすぐに朝が来て、寝台ベッドを椅子にしなければならない時間となった。列車は草原の中をひた走っていた。俺は椅子に座ってからもうとうとしては目を覚まし、外の風景を見て、またうとうとしてを繰り返していた。

カルカッタが近づいてきた。外の風景は草原からすっかり街になっている。列車がスピードを落とす。何十本ものレールが巨大なドーム型のカルカッタ駅に吸い込まれていた。俺の列車もドームの中に滑り込んだ。そしてまさに停止しようというその時、、、俺は目を覚ました。

ん???あれ?どうして俺は眠っていたのに列車が駅に入るのが見えたんだ?どうやらちょうど同じタイミングで、現実と全く同じ夢を見ていたのだった。多分。。。

カルカッタの駅から安宿が集まるサダル・ストリートまでは地下鉄で行けるとのことだったが、電車賃をけちって歩いてサダルを目指した。だがこれも失敗だった。思った以上にその距離はあり、さらに道にも迷い、結局また1時間以上も歩いてようやく宿に着いた。

ちょうど午後6時。丸2日間に渡る長い長い移動だった。