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キャプテンコージの世界一周旅日記

グアムの友

アメリカ グアム

地図旅から現実の世界へと戻ってきた俺は社会人となり、朝から晩まで働き尽くめの毎日を送っていた。1年が経って仕事も一段落した頃、当時のプロジェクトで慰安旅行としてグアムに行くことになった。

まさか俺がこんなリゾート地に来るなんて思わなかった。ビーチ沿いには豪華なホテルやブランドショップ、観光客向けのレストランが建ち並んでいる。確かに海や街は綺麗だが、綺麗なだけで何の刺激もないところだった。

俺は久々の海外ということで、皆が帰った後も有給を使って1週間グアムに残る計画だった。だがこれだけ退屈な島で楽しむことができるだろうか。1人残るとなったら安宿に移りたいが、そもそもグアムに安宿なんてあるのだろうか。そんなことを心配していた時、ぽん引きの兄ちゃんと友達になった。名前はマーティン、かなり見た目は怪しいがいい奴だった。俺の事情を知ると、彼は母親と2人暮らしの自分の家に泊まれと言ってくれた。

写真マーティンの家はグアムのメインビーチから車で少し走ったところにあり、思いっきり生活感溢れるローカルなエリアだった。日本人観光客だらけのグアムだが、そんなところに来る観光客はいないらしく、近所でも珍しがられた。家は狭くボロボロだったのだが、居心地が良かった。毎日お母さんの作ってくれるご飯を食べ、マーティンのベッドの隣にござを敷いて寝た。

マーティンは俺をいろいろなところに連れて行ってくれた。全く人が来ないような静かなビーチ、森の中に流れる川、親戚が営む養豚場、行き着けのパチンコ屋、、、。その間、ぽん引きの仕事は休みだ。若い頃に刑務所に入り、出所してから毎日働いてきた彼が初めて取った休みということだった。

マーティンは孤独な男だった。生まれ育ったこの島には知り合いはたくさんいるが、一緒につるむような友達はいないらしい。そして、実のお兄さんとも馬が合わず、隣の家に住んでいるにも関わらずもう5年も話していないと言う。関係を直したいのだが、どうすればいいのかもう分からない。そこで、俺が兄弟の仲直りのために一役買うことにした。

写真ホームステイをさせてもらったお礼として、俺がスイカをマーティンの家族に振舞うという企画を立てた。大きなスイカを買ってきて、マーティンと俺が準備をし、お母さんがお兄さんを呼びに行った。お兄さんがやって来て、マーティンが俺をお兄さんに紹介した。「こいつはコージ、日本から来た友達だ」と。兄弟が5年振りに交わした言葉だった。その日の夜、これからまたお兄さんと普通にやっていけそうだとマーティンが話していた。俺はなんだかとてもいいことをしたような気がして、嬉しかった。

グアムを離れる日がやってきた。丸々と太ったお母さんに強烈なハグをされた後に、マーティンが俺を空港まで送ってくれた。別れる時、俺に巨大なほら貝をくれた。マーティンの部屋に飾ってあった彼の宝物で、それを拾ってきたときのエピソードも聞かせてもらったことがある。

「これ、マーティンの宝物だろ?」
「いいから持って行きな。これを見たらグアムのことを思い出してくれよ」
「うん、ありがとう」
「お前がグアムの方に向かってこの貝を吹けば、その音は俺に届くから」

マーティンの顔からは想像もできないような臭い台詞に、思わず笑ってしまったのだが、同時に目の奥が熱くなった。この感覚はケアンズを去る時以来だ。

社会人になっても、やっぱり旅はやめられない。