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キャプテンコージの世界一周旅日記

再会

イギリス リバプール

地図マドリッドからロンドンに再び戻った俺は、その日の夜行バスでリバプールへ向かった。3年前に、ルーマニアのブカレストで出会い、トルコまで数日を共にしたDavidと再会の約束をしていた。

当時、俺は27歳、Davidは19歳。随分と年は離れていたが、妙に気が合った。彼はパキスタン系イギリス人で、オリエンタルな甘いマスクにドレッドヘア。その時すでにマイナーレーベルからではあるが、アルバムを数枚出しているミュージシャンだった。俺はそのルックスとキャリアに憧れのような感情を持ったのを覚えている。今、彼はもう一度基礎から音楽を勉強するためにリバプールの芸術大学に通っているとの事だった。

バスがリバプールに着いてから、Davidに電話して迎えに来てもらった。3年振りの再会。相変わらず魅力的な笑顔で現れたDavidは、かなり興奮している様子だった。異国で偶然出会い、またいつか会おうと交わした約束がこうして実現した事に対して、“Wonderful!Excellent!”の連発だった。長く旅をしていると、色々な人に出会い、多くの人と連絡先を交換して再会を誓うが、それが実現されるチャンスはなかなかない。俺にとっても感動の再会だった。

朝食を買って彼のアパートへ行った。その古い大きなアパートでは、彼が通うリバプール芸術大学(LIPA)の学生7、8人が住んでおり、シャワー、トイレ、キッチン、リビングは共有で、他にそれぞれの部屋があるスタイルのアパートだった。

写真彼の部屋はロフト付きの広いワンルームで、20畳ほどのフロアにはドラム、キーボード、ギター、ベース、マイクスタンド、レコーディング機器、編集用のコンピューターの他にも、インドのシタールや、アフリカのジャンベ、オーストラリアンアボリジニのディジュリドゥなど様々な楽器で埋め尽くされていた。週一日大学に行く以外は、多くの時間を彼はこの部屋で作曲や作詞、レコーディング、編集に費やすと言う。

彼の専門はボーカルなのだが、その曲作りはもちろん、全ての楽器を一人でこなしているのだ。最近作ったという曲を聴かせてもらった。キザイア・ジョーンズなどのアフリカンファンク系に影響を受けているようだったが、歌の雰囲気やリズムなどにオリジナリティがあって、かなりかっこいい音だった。彼から自分のCDをもらったのだが、後になってからCDにサインしてもらうの忘れた!冗談でここにサインしたら、いつかプレミアがつくかもねと話していたのだが、実は俺は半分本気だったのに。。。

昼はリバプールの街を観光した。イギリス最大のカテドラル、港、海洋博物館、現代美術館、街中にポツンと置かれている黄色い潜水艦(イエローサブマリン)。Davidはこうやってリバプールを訪れた友達を案内するのは初めてらしく、ツアーガイドになったつもりではしゃいでいた。

彼が通うLIPAにも行った。ここはポールマッカートニーが設立した新しい大学で、音楽、芝居、アートなどを学びに世界中から若者が集まっている。芝居の練習風景や最新設備によるレコーディング風景を見学したり、学生達が集まっているロビーでコーヒーを飲んだりした。中学の頃からずっとスポーツばかりしてきた俺は、一見体育バカにも思われがちだが、実はスポーツよりも音楽や映画の世界を愛し憧れてきた。そんな俺にとって、若さと可能性に溢れた学生達はとてもまぶしく映った。

その後、Davidのガールフレンドの部屋に遊びに行った。彼女Sarahはバイオリニストで、作曲もする。小柄で可愛いSarahは、一見どこにでもいそうな女子大生といった感じなのだが、何とあのビョークに曲を提供したりもしているという。実はDavidもスペインの有名な歌手のツアーにパーカッションとして今年の夏、参加していたらしい。何と有望なカップルだろう。

Sarahのルームメイト、Abbyは身長180cmくらいのロシア美女(ロシア出身かは分からないが)。完璧なスタイルにグウィネス・パルトロウを冷たくしたような顔の彼女は、そのままモデルで通じるような感じなのだが、話し始めるとおっとりして、可愛らしい子だった。

Sarahの部屋でしばらくおしゃべりした後、他の友達も誘ってMadam何とかという芝居を見に行った。芝居自体なかなか面白いものだったが、もっと面白かったのは、その後の皆だった。さすがに芸大に通う彼らは芝居の評価が熱い。「俺だったらあの場面はこういう展開にする」「あそこの演出はこうした方が面白い」「誰々のあそこの演技は素晴らしかった」などと突っ込んだ話をしている。特に熱かったのはDavidと同じアパートに住む役者志望のJohnだった。

写真夜はアパートのリビングで飲み会になった。俺にとっては憧れのDavidだが、彼からしてみれば俺は世界中を一人で旅しているスゴイ奴らしく、他の友達に「コージはこんな所にも行ってるんだぜ」と話たり、「あの国でのあの話をしてやってくれよ」と俺にせがんだりしてくる。

音楽や芝居一筋の彼らにとっては、アジアや中東、中南米はまさに別世界らしく、食い入る様に俺の話を聞いている。演劇バカのJohnが、ぼそっと「いつか俺もそんな旅がしてみてーな」と言った。旅なんてやろうと思えば誰でもいつでも出来る。こいつらみたいに一つの事に突っ走ってる方がずっとカッコイイと俺は思うんだが。。

その日は明け方近くまで飲み、次の日ほとんど眠っていない状態でリバプールの空港までDavidに送ってもらった。また次の再会を誓い合って別れた。運転席から笑顔で親指を突き上げて去って行くDavidはやっぱり爽やかで格好良かった。彼の車が見えなくなってから、俺は空港の入り口から少し戻り“Liverpool John Lennon Airport”という空港の看板の写真を撮った。これを撮っているのを見られたら格好悪いかなと思って。。