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キャプテンコージの世界一周旅日記

コトパクシ【前編】

エクアドル コトパクシ

地図年越しを何か特別なものにしようということで、ジェラルドと俺は世界最高峰の活火山であるコトパクシ(5,897m)に登ることにした。俺達はもうキトに来て1ヶ月近く経っているし、毎朝アパートの屋上でテコンドーのトレーニングもしているので、高地での体力も問題ないだろう。数日前から早寝早起きを心がけ、前日からはタバコの本数も控えて万全(?)の体勢で挑んだ。

12月31日の早朝、旅行代理店で頼んでおいた登山用具を車に積み、ガイドと合流してコトパクシに向かった。いつものごとく、キトから数十分も走ればド田舎地帯となる。天気は快晴。のどかな田園風景が広がる中をひた走り、2時間程で麓に着いた。そこからコトパクシを見上げる。美しい。頂上から緩やかに稜線が伸び、青空をバックに真っ白な姿が眩しい。だが、目の前のその姿は、とてつもなくデカイ。本当に俺はこの山のてっぺんまで登れるのだろうか。。。

写真まずは4800m地点の山小屋まで登る。麓と言っても既に富士山の頂上くらいの標高はある。空気は薄く、すぐに息が切れる。ここではまだ雪はなく、土の上を歩くため、雪山用の装備や防寒具は担いで登る。これがまた重い。リュックが肩にずしりと食い込む。山小屋に着いた時には既にもうくたくたになっていた。

山小屋で遅めの昼食を取ってから、そこから少し登った所にある氷河でアイゼン(ブーツに装着するスパイク)とストックを使って氷河クライミングの練習をした。俺はさっきまでの疲れが吹っ飛んでしまったかのように快調で、いいペースでぐんぐん登った。ふと振り返ると、下の方に広がる雲の間に虹が出ている。虹を見下ろすなんて生まれて初めての経験だ。(写真では分かり辛いかな?)

「ジェラルド!虹が下に見えてるぞー!」俺がはしゃいで叫んでいるのに、随分と遅れて登っていたジェラルドは気のない返事をしただけだった。彼は既に高山病にかかっていたのだ。

山小屋に戻った頃にはジェラルドの状態はひどいものになっていた。顔は青く、声も弱々しく、歩くのもままならない程フラフラしている。夕食も食べずに寝袋の中に入ってしまった。俺はガイドのフェルナンドと夕食を食べた後7時頃横になった。初日の出を山頂で見るためには夜中に出発しなければならないのだ。

写真だが7時というのは早すぎる。なかなか寝付けない。眠らなきゃ眠らなきゃと思っているうちに、頭が痛くなってきた。胃も痛み出した。まずい、高山病の症状だ。頭と胃の痛みのせいでますます眠れない。やばいやばい、これはやばい。。。

気がつくと夜中の12時を少し過ぎたところだった。結局一睡もできなかった。しかも寝袋の中で苦しんでいるうちに年を越してしまった。なんてこった。記念すべき年越しだったのに!

隣で眠っているジェラルドを起こした。「時間だぞ、行けるか?」「ダメだ、とても動けそうにない。コージ一人で行ってくれ。」なんだか今生の別れのような気分になってきた。ジェラルド一人残していくのは忍びないが仕方が無い。俺達はどちらかがギブアップしても行ける方は行こうという約束をしていた。俺はフェルナンドと軽い夜食を取り、高山病対策のコカ・ティーを飲んだ。

このコカとはコカインの原料であるコカの葉で、アンデスの高地に住む民族などはよくお茶にして飲んだり、噛みタバコのように噛んだりしている。痛み止めの効果があり、高山病にもよく効くと言われている。準備をして出発する頃には、頭痛も胃痛もすっかり消えていた。さあ、ついに、頂上アタックだ!

午前1時、山小屋を出発。気温マイナス10度。幸先悪く、大きなヒョウが激しく降っていた。どうなることかと思ったが、しばらくするとヒョウは止み、今度はからっと晴れ渡り、俺の目線と同じくらいの高さに月が現れた。綺麗な満月だ。

足元には雲が一面に広がっている。その雲海を、月の光がこれまで見たこともない程の濃い黄色に染めている。遠く上の方には目指す山頂がうっすら白く浮かび上がっている。さらにその上空には、無数の星がまたたいている。