株式会社waja株式会社waja

キャプテンコージの世界一周旅日記  >  さらば友よ

キャプテンコージの世界一周旅日記

さらば友よ

あいつとの出会いは2年前の秋だった。

当時フリーのコンサルタントとして働いていた俺は羽振りがよく、調子に乗って中古のメルセデスベンツのステーションワゴンを購入した。総革張りサンルーフ付きの、めちゃめちゃ格好いい車だった。

ちょうどNHKのスペイン語講座でスペイン語を勉強し始めた頃だった。それが中途半端な時期だったために、挨拶や基本文法からではなく、現在進行形からのスタートになってしまった。そんな俺が最初に覚えたフレーズは”Estoy buscando a Miguelito”だった。意味は、「私はミゲリートさんを探しています」というものなのだが、どうも俺はそのリズムが気に入ってしまい、よく口ずさんでいた。

そんなこんなで、俺の愛車に付いた名前は“ミゲリート”だった。

その後一年間の旅に出た。日本を発つ前にミゲリートを売ってしまおうかとも思ったが、結局手放すことができなかった。一年後に帰国して再会したときには、感動すらも覚えた。そして俺は毎日ミゲリートに乗り、店まで出勤していた。店の内装作りのための木材や家具を買出しに行くことが多く、その度にミゲリートは大活躍だった。

そして昨日、wajaショップのオープンを祝いに友人が何人か店に飲みにきてくれた。通常の営業時間を延長して、夜中の2時過ぎまで店を開けていた。とっくに終電はなくなっていたので、みんなを家まで送っていくことにした。

最後の1人を下ろし、俺は首都高に乗って帰路に着いた。朝の4時。雨が降っていた。車の数は少ない。俺はややスピードを上げた。右へ曲がるカーブの直前、軽くブレーキを踏んだ時、、、タイヤがスリップした。

そこから後はスローモーションのようだった。後輪が左に振られ、反転した車のフロンドガラス、俺の視界には右側の壁が迫ってきた。必死にハンドルを左に切る。だが既にもうハンドルは利かない状態だった。車はそのままの態勢で左に滑っていく。カーブに差し掛かった。今度は左側から壁が迫ってくる。あーもうだめだぁっ!!!

・・・・・

フロントの左が壁に激突し、車は止まった。だがどうやら俺は無事のようだ。怪我もない。だが、ミゲリートは、もうめちゃくちゃだった。。。

警察の処理が終わった後、俺はレッカーを呼んでミゲリートを自宅まで運んだ。いつものように駐車場に入れる。だが、やつはもう動くことはできない。

しばらく俺はミゲリートを失ったショックで頭がいっぱいだった。だが落ち着いてくるに従い、自分の身が無事だったことの方が奇跡のように思えてきて、クラッシュの瞬間のことを思い出すと今度は恐ろしくて仕方がなくなった。

そしてその日の昼、愛犬のコロが死んだ。俺が子供の頃に近所のペット屋でもらって来た子犬が産んだ子供のそのまた子供だ。3代に渡ってずっと飼ってきた、家族の一員だった。もう何ヶ月も前から随分弱っており、いつ死んでもおかしくはないような状態だった。だが、コロは今日死んだ。まさか、、、

「コロが、俺の身代わりになってくれたのか???」

ふとその思いがよぎってから、そのことは俺の中ではもう疑いようのない真実になってしまった。

ミゲリートとコロ、大切な2人が俺の命を守ってくれた。俺は、今日の日を、そして俺を救ってくれた2人の友達のことを、決して忘れることはないだろう。