株式会社waja株式会社waja

キャプテンコージの世界一周旅日記  >  チワン族

キャプテンコージの世界一周旅日記

« 大激闘@旅社   |   目次に戻る   |   ベトナム流 »

チワン族

中国 広州、東興

地図香港から深センを経由して広州に入った。さすが中国第四の都市だけあって、公衆便所も壁で囲われており、近代化されている。中心地のメインストリートは綺麗に整備され、マックは若者達でいっぱいだ。建設ラッシュの中国を象徴するかのように、古い民家が次々に壊され、高層ビルに変わっていく。かつて自転車の大群が走っていたであろう道路はバイクで埋め尽くされていた。

写真それは俺にとってみれば少し期待外れだった。先進国からやって来た旅行者が、その国の発展を見てがっかりするのはとても失礼なことかもしれないが、俺は噂に聞いていた中国ならではの開放便所を見たかったのだ。中国人には食堂でぶっかけ飯をガツガツ食べていて欲しかったのだ。

写真想像とのギャップや表情のない中国人達にいま一つ馴染めないまま、俺達は中国を出てベトナムへ向かうことにした。中国とベトナムの国境は3つある。メジャーなのは河口⇔ラオカイと憑祥⇔ドンダンの2つだ。だが俺達は残りの1つ、東興⇔モンカイのルートを取ることにした。ガイドブックにも載っていない国境だったのだが、次の目的地であるベトナムのハロン湾に行くにはこれが最短ルートだった。ベトナム領事館で聞いても東興の情報はなく、無事に国境を越えられるか少し不安だった。

バスが東興に着いたのは朝の5時前だった。まだ辺りは真っ暗だ。どこにどう向かっていいのか分からなかったが、駐車場のようなバスターミナルの横にはなんとか旅行社と書かれた建物があった。きっとここは国営の旅行代理店で、外国人の出国手続きもやるのだろうと思い、とりあえずそこが開くまで待つことにした。

写真チャリンコタクシーのおじさんが寄ってきた。なにやら分からない中国語でまくしたてている。何を言っているのか全く分からない。とにかく俺は状況を説明したのだが、もちろん日本語どころか英語だって分かるはずがない。おじさんは仲間を呼んだ。あっという間に10人以上に囲まれた。ここはチワン族という民族の自治区なだけに、おじさん達も広州で見た漢民族とは違い、南方系民族の顔をしていた。

「ベトナムに行きたい(欲往越南)」「出国手続きはこの旅行社でできるのか(出国可此旅行社?)」とめちゃめちゃな筆談とジェスチャーで伝えようとするのだが、なかなかうまく伝わらない。おじさんは「とりあえず俺達のチャリに乗りな」と言っているようなのだが、俺はそれがイミグレーションに連れて行ってくれるのか、それともただ単に乗せたいだけなのか、もしくはひょっとしたら何か悪さを働こうと企んでいるのかも分からず、迷いながらもやはりここで待つことにした。

チャリタク軍団は去っては集まり、また意味の通じないやりとりをして、諦めて去ってはまた集まり、、、それがなんと3時間も続いた。毎回初めから話をして、毎回同じようなところで躓いて結局分かり合えずに終わってしまう。さすがに俺ももう彼等に対する疑いの心はなくなっていた。何せ皆ずーっと笑顔なのだ。都会の広州ではほとんど俺達に向けられることはなかったような、温かい笑顔だった。だがその分逆に分かり合えない歯痒さが残った。

写真普段の俺だったらとっくにおじさんのチャリタクに乗っていただろう。だが結局そうしなかった。悪い人達じゃないことは分かってはいても、俺達のような外国人旅行者が国境を越えるために必要なことを本当に理解しているか疑わしかったし、くみと一緒ということもあり、少しでも確実な方法を取りたかった。とにかく俺は隣の旅行社が開くのを待った。

ついに旅行社が開き、出国手続きをしようとすると、ここはイミグレーションではなく、国境までは遠いからとタクシーを呼ばれた。そこは出国手続きには何の関係もない、ただの旅行代理店だったのだ。

迎えに来たタクシーに俺達が乗ろうとしたとき、周りにいたチャリタクのおじさん達は何とも言えない苦笑いで俺達のことを見ていた。「どうしてこれだけ待ってタクシーなんかに乗るんだ」「俺達は信用してもらえなかった」「日本人の考えることは分からない」そんなことを思っていたのだろうか。

彼等は珍しい外国人を歓迎していただけなのかもしれないし、困っている俺達を放っておけなかったのかもしれない。俺は彼等を裏切ってしまったような気持ちになり、自分が情けなかった。どうして俺はあんな頑なに守りに入っていたんだろう。彼等の前を通り過ぎる時、彼等に向かって俺もやはり苦笑いを向けることしかできなかった。

おじさん達の温かい笑顔と最後の微妙な苦笑いが、ずっと俺の頭を離れない。俺はなんともやりきれない思いのまま中国を後にした。

(写真下は東興のバスターミナルでバスの荷台から放り出された鶏達)

« 大激闘@旅社   |   目次に戻る   |   ベトナム流 »