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キャプテンコージの世界一周旅日記

“ご招待”にはご用心!

チリ プンタ・アレーナス

地図ジェラルドと再会した日の夜、南米大陸最南端の街、プンタアレーナスのしけたバーで飲んでいると、1人の派手なおばさんが話しかけてきた。こんな田舎にしては珍しく英語だった。「どこから来たの?」「パタゴニアは気に入った?」しばらく当り障りのない話をした後、「ちょっと待ってて」と言って窓際の男女2人ずつのテーブルに行き、何やら話した後にその女2人を連れて俺達のテーブルに戻ってきた。

写真2人のうち1人はさっきから前の男の目を盗んではしきりと俺に視線を投げかけてきていた子だった。その子が俺の隣に座った。遠目では綺麗かもと思ったその顔は、近くで見ると男が無理に女装したような男顔だった。

ジェラルドの隣に座ったもう1人は、ニットのVネックから巨大な胸の谷間を「これでもかこの野郎!」と言わんばかりに盛り出している子で、巨乳好きのジェラルドの背筋が自然と伸びた。

そして派手なおばちゃんは誕生日席に座り、何かと会話をリードして行く。なんだか変なお見合いみたいになってきた。

男顔のスペイン語はチリ訛りがとにかくひどく(南米の多くの国はスペイン語圏だが、国によって方言が大きく異なる)、俺にはよく理解できないのだが、適当に「あっそー」とか「分かんない」とか言っていると、今度はしきりと俺の腕や太もものあたりを触りながらしゃべってきた。

ジェラルドの方も会話はほとんど成り立っていないのだが、2人でデレデレ笑っている。妙に背筋が伸びたジェラルドの視線は相手の目よりも若干下の方を捉えているようだ。

写真しばらくすると派手おばちゃんが「さあ、この後はどうする?」と言ってきた。「この子(男顔)が働いているバーがあるからそこで飲み直さない?」と言ったとき、ぼったくりバーの客引きなのかなと思った。だが、続けて「そこには他にも若い子がたくさんいるわよ」と言ったとき、その何かを含ませた言い方で娼婦の斡旋だということが分かった。

ジェラルドと目を合わせると、奴も気付いたらしく、いきなり俺に日本語で「スキジャナーイ」と言ってきた。これはジェラルドが知っている数少ない日本語の1つだ。他には「スキ」「ホシイ」「ホシクナイ」「イコウゼ」「オオキイオッパイ」などがある。最後の1つを除いて、どれも2人で旅をしていると便利な言葉だ。簡単な英語だったら南米でも理解されてしまうことがあるので、俺達は何かの誘いに対して相談する時などはこれらの日本語をよく使う。

俺が「OK、イコウゼ!」と言うと、ジェラルドが頷いたので、派手おばちゃんにもう帰るからと言って断り、店の人にチェックを頼んだ。

派手はそれでもしつこく誘ってきたが、俺達がきっぱり断ると、「あら、残念ねぇ、じゃあこれはよろしくね」と言って店の人が持ってきた伝票をこっちに渡してきた。

俺が「ホシクナーイ」と言うとジェラルドも同じく「ホシクナーイ」と言い、俺達のビール代だけきっちりテーブルに置いて、「後はそれぞれ払ってね」と言った。すると派手がこう言った。

「あら、招待してくれたんじゃないの?」(”Oh, you invited me, no?”)

写真出た。お得意の言葉だ。この「招待=invite」は、南米の人が外国人に「おごってもらう」という意味で使う言葉だ。英語ではもしあったとしても辞書の5番目くらいの意味で出ている程度だとは思うが、南米ではダントツで「おごる」という意味がメジャーになる。そしてそれを使う場合、常に主語が”you”で、目的語が”me”になる。

「は?どういう意味?」ととぼけると、「私がウイスキー飲んでもいい?って聞いたらいいって言ったじゃない」と言ってきた。「それは飲みたかったら飲めばいいという意味で、誰もおごる(invite)なんて言ってないよ。しかもこんな高い酒」(国産ビールは1,000ペソ=約1.5ドルだが、派手が飲んでいた輸入ウイスキーは4,500ペソ)と言うと、急に不機嫌さを露骨に出して汚い言葉で文句を言い出した。

男顔と谷間は自分の安いカクテル分の金だけ置いてささっとどこかに行ってしまった。ジェラルドと俺も席を立った。帰り際に「チャオ」と言うと、派手ばばぁはそれには答えず、「チッ」と舌打ちをしながらタバコをふかしていた。

(写真一番上は南米最南端のマゼラン海峡、 写真一番下は車に並んで普通に駐車してある馬車)