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キャプテンコージの世界一周旅日記

旅姿六人衆【前編】

ブラジル サンパウロ

地図

サンパウロの日本人宿、“ペンション荒木”で6人の男が出会った。

まずは言わずと知れた俺、コージ。脱サラして起業したと思ったら旅に出て、今こうしてサンパウロで毎日シュラスコを食べている。

一番古株のユウジは、日本から1ヶ月の休みを取ってブラジルに来て、もう1ヶ月以上サンパウロにいる。永住を狙って来ていると噂されていた。それについてはいつも笑いながらごまかしていたのだが、ある日俺はユウジの部屋でポルトガル語の参考書と、びっちりメモが書かれたサンパウロ市内地図を見つけた。その時俺はこの男が本気なことを知った。

ナオトは元役者のイケ面だ。ジェームス・ディーンに憧れ、彼が生きたのと同じように自分も生きようと走り続けている男だ。今はやはり彼にもこういう時期があったように、役者を辞めて旅に出てきたところだ。これから南アフリカへ飛び、そこから北上して中東へ入り、アジアを横断して日本に帰るという壮大な旅の計画を持っていた。

最年長33歳のカズオさんは、銀縁メガネが似合う爽やかなお兄さんだ。以前は兜町で場立ち(手サインで大騒ぎしながら株を売買すること)をやるようなピッカピカの証券マンだったと言う。ある時何かがプツンと切れ、旅に出るようになったらしい。いつも行き先も決めず、気の向くままに旅をしていると言う。

ミュージシャンのセイジは、ピーターとコロッケと高山(プロレスラー)を混ぜたような、陽気で豪快な男だ。ギターや太鼓を持って旅をしている人はよく見かけるが、セイジが持っていたものはトロンボーンだった。ブラジルの東海岸を、ビーチやバーで出会ったミュージシャンとセッションなどをやりながら旅をしてきた彼だったが、ふとアフリカの音が自分を呼んでいるような気がして、西アフリカへ飛ぶためにサンパウロにやってきたと言う。

写真ひと際若い20歳のタクミは、体も小さくてまだ仕草も幼く、皆から弟のようにかわいがられていた。以前タクミは大学受験に失敗し、ずっと実家の自分の部屋で引きこもりをしていたらしい。ある日突然旅をしようと思い立ち、バイトをしてお金を貯め、日本を飛び出した。トルコから中東を下り、エジプトからサンパウロに飛んできたというタクミは、旅の話となると目を輝かせる。きっと日本にいた頃とは全く別人の顔を今しているのだろう。自分の部屋からも出なかった男が、中東やアフリカ、南米を一人で旅しているのだ。その経験がこの男にどれほど大きな自信と刺激を与えてきたことか。

俺達は毎晩のようによく語り、よく飲み、よく歌った。旅先で偶然に出会った6人が、まるでファミリーのような仲間になった。溜まり場となっていた2号室に行けば必ず誰かがいた。外に飲み出れば自然と6人が揃った。毎日が楽しくて仕方がなかった。

だが俺達は皆旅人だ。それぞれ行く先は異なる。俺はリオ・デ・ジャネイロへ、ナオトは南アフリカへ、セイジは西アフリカへ、タクミはアルゼンチンへ行く計画だった。カズオさんは次の計画をまだ決めておらず、ユウジは日本に帰らなければならなかった。

次の場所はそれぞれ遠く、もちろんそこに行けばまた一人ぼっちになる。怖い思いをするかもしれない。楽しい出来事が待っていてくれるか、いい出会いがあるかなんて分からない。サンパウロは俺達の庭のようなところで、何より仲間達と一緒だった。そんな街を離れるのは辛い。現に俺も前もって予約しておいたリオからサンチアゴへの飛行機の予定を、もう3度も変更して延ばし延ばしにしている。

そんな俺達が再び旅立つことになったのは、ある一つの小さな恋がきっかけだった。