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香港
ある晩夕食を終えて宿の部屋でくみとまったりしていた時、ふと床に黒い物体を発見した。まさか、まさか・・・。俺がこの世で最も恐れている奴だった。ゴキブリだ。幼い頃、風呂場で飛んできたゴキブリに顔面を襲撃されて以来、その恐怖は俺の心から消えることはなかった。そしてゴキブリが苦手なことはくみも同じだった。もし結婚したらゴキブリをどっちが始末するかという話になると毎回喧嘩になるくらいだ。
「どうしたの?」
「ゴキブリだ・・・」
「もー、だからこんな所泊まりたくないのにぃぃぃー!!!」
そう来ると思った。ここは何とかしなければ。このまま奴を野放しにしたら、くみだけじゃなく俺もここには泊まれなくなるし、今後の旅のスタイルに大きく影響を及ぼすことにもなる。ここは絶対俺がなんとかしなければならなかった。
部屋の中を見渡すと、何故か紙コップが一つ置いてあった。俺はそれを取り、思い切ってゴキにかぶせた。見事にコップに収めた。さあそこからどうする?床に置いてあった荷物をどかし、部屋のドアまでの道を作る。そしてゆっくりと、そぉーっとゴキの入った紙コップをスライドさせていく。なんとか部屋からは出ることができた。だがまだ廊下も宿の中だし、ドアの下には隙間がある。完全に宿の外に出さなければならない。殺してしまえば終わりだろうと思われるかもしれないが、俺はゴキブリを殺すこともできないのだ。
廊下でもそろそろとスライドさせる。紙コップの下から長い触角がはみ出した。コップの淵でゴキをすり潰すようなことになったら最悪だ。俺はさらに慎重にコップを動かした。ふてくされ気味だったくみも、俺の懸命な姿に感動を覚えたのか、すぐ後ろで応援している。よし、任せておけ!
宿のドアは一段高くなっていた。スライド方式で外に出すことはできない。俺は1枚の紙をコップの下に滑り込ませた。完全にその紙がコップの下を覆った状態で、俺はゆっくりとその紙を持ち上げた。中でカサコソと音がする。
ドアを出ると5メートルほど先にはゴミ置き場がある。ポリバケツの中に捨てよう。あともう少しでゴミ置き場というところで、持っていた紙の真ん中部分が少しだけしなった。ヤバイ!そして次の瞬間、紙とコップの間にできた隙間から奴が顔を出した!「ぎゃー!!!」俺は紙とコップごと放り投げ、一目散に宿に向かって逃げた。俺が駆け込むのと同時に、くみがドアを閉めた。ナイスコンビネーションだ。部屋に戻ってもしばらくは心臓のバクバクが収まらなかった。
「やったね」
「やったな」
「コージ、かっこ良かったよ!」
「おう、そうか」
どうやらこれでまたくみは俺に惚れ直したらしい。
え?アホカップルと呼ばないで。。。
(写真上は男人街 下はマッサージ屋の看板)
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